歯科治療は,そのまま口腔侵襲となる。そのため,安心・安全の観点から,日常の診療システムに,心電図やパルスオキシメータなどによるモニタリングの導入が望ましい。社会保険の給付対象として認可されれば購入するという向きの強いことは承知しているが,行政が今以上のインセンティブを与えることは当面考えられない。ならば,モニタリング導入の実態を先行させるしかないであろう。初期投資に対して若干の抵抗はあろうが,いったん導入してみると維持経費はわずかですむことがわかる。問題となるのは,むしろ人材である。
外来小手術の術中監視
採血ならびに静脈確保(点滴)による静脈内鎮静法は,病院歯科の場合かなり頻度の高い手技である。また術前術後(周術期)においても,ケア(看護)や器械によるモニタリングを実施することから,それらの業務を担う看護師が必要となる。救命救急を要する事態となればなおさらであろう。
歯科衛生士と看護師
歯科衛生士は,歯科診療所からの求人が依然として多い。この原因として,絶対数が少ないためか退職率が高いためかについては,議論のあるところである。また近年の人口の高齢化に伴い,介護福祉業務へのニーズが潜在的に高いのも事実であろう。しかし,総合病院関係者から見て歯科衛生士の決定的な弱点となっているのは,歯科医と同様に歯科以外の他科業務,特に宿日直ができないことである。その結果,准看護師との間にも大きな格差が存在する。歯科衛生士さらには歯科界の将来を展望した場合,修業年限が3年となる近未来には,歯科衛生士業務の見直しが迫られるであろう。そもそも歯科衛生士は,第2次大戦後にアメリカやニュージーランドから直輸入された制度である。1957年には,「歯科診療介助」を業務に加える改正が行われたが,今後行われる改正はその時よりも困難を伴うかもしれない。しかし,日本医師会は看護協会と対立してでも,長年にわたり准看制度を死守する姿勢を示している。そこで,歯科衛生士の業務拡大について,歯科界は日本医師会と連携してはどうだろうか。既に総合病院歯科口腔外科の歯科衛生士は,薬剤投与などの全身管理の実務経験を,然るべき施設で指導する歯科医のもとに積み重ねた場合,厚労労働省もそれを容認する時代となっている。
行政の変化のポイント
自民党政権からたとえ他の政権に変わったとしても,日本は規制緩和,情報公開そして地方分権への道を進むと見るのが,霞ヶ関の一般的見解とされる。経済的規制も,事前規制から何か問題が起きたら対応するという事後チェック型に変化しているし,市町村合併の進展は道州制に向かうであろう。歯科医師は別として,わが国の医療,介護福祉の人的資源は,中長期的に量的拡大が求められている。若年人口の急激な減少の対策を考えた場合,外国人(フィリピン)看護師・介護(福祉)士の導入に始まるWTOやFTA,EPAの動向も無視できない。グローバリゼーションの是非はともかく,人的交流の規制緩和も加速されると見るべきである。
歯科衛生士の業務拡大
歯科臨床の拡大とともに歯科衛生士の業務も複雑で多岐にわたるようになった。ケアマネジャー,ホームヘルパー2級への道は開けたが,これは修業年限2年制時代の"産物"である。3年制は目前に迫っており,歯科衛生士の業務に関する問題は,歯科固有の領域だけにとどめるべきではない。前回の歯科技工士問題と合わせて,歯科界における中長期的戦略の構築へ向けての姿勢が問われるところであろう。歯科における訪問診療や救命救急システムの発展も,ここにカギがあると考える。



















