現在,歯周病の再生治療における成長因子の研究で,日本で進められ実用化が最も近いものはb-FGF(線維芽細胞増殖因子)であろう。日本の歯科大学や歯学部のほとんどが加わって,この薬剤の第3相臨床試験が行われている。
組織レベルで新生血管が増加
FGFは1970年代に見出された分子量17,000の蛋白質であり,多様な生物学的活性が認められており,臨床の場でも褥瘡性皮膚潰瘍などの治療薬として用いられるまでになっている。さらに,b-FGFは従来の治療法では不可能であった重症の末梢血管疾患(例えばバージャー病や糖尿病性下肢壊疽)に対しても高い効果が認められ,その使用で側副血行路がつくられたり,組織レベルで新生血管が増加したり,重症例ですら完治すると報告されている。そのほか,心筋梗塞の治療として実験的ではあるが,心筋細胞移植前に投与することで血管新生とともに移植細胞の生着率が高まるなど,再生医療で本剤は大きく発展するものと期待されている。b-FGFの持つ強力な血管新生作用と間葉系細胞の増殖誘導能を歯周組織の再生療法として開発しているのが大阪大学の村上教授らの研究グループである。同氏らはイヌで下顎臼歯部にて臼歯分岐部欠損をつくり,FGF-2を局所投与した。本剤が投与された実験例で肉眼的にも明らかな骨の新生を認めている。組織学的にも歯槽骨,歯根膜,セメント質のいずれにも統計学的に有意な組織再生を認めた。
臨床的にも確認された組織再生
臨床的には2001年に第2相の臨床試験を行い,ヒトの2壁性および3壁性歯槽骨欠損例においての0.3%FGF-2とDDSとして,局所での徐放効果を高めるハイドロキシプロピルセルロースの併用により,臨床的およびX線写真上においても統計学的に有意に歯周組織が再生することを見出している。第2相の臨床試験では安全性の確認も主眼の1つとなるが,大きな問題となるような副作用は認められていない。同氏らはb-FGFが歯周組織の再生に有効な理由として,創傷の治癒初期において未成熟な歯根膜細胞を増殖させるように働き,血管の新生が促進される。それとともに細胞外基質(ヒアルロン酸,オステオポンチン)の産生を促し,さまざまな歯周組織のバランス良い再生が起こる環境がつくられ,創傷治癒後期には誘導された細胞のセメント芽細胞,骨芽細胞,歯根膜線維芽細胞への分化が進み,それらがそれぞれの組織をつくり出すものと考えている。最初に述べたように,現在,第3相の臨床試験が行われており,認可されれば間もなく臨床医も自由に使えるときが来ると期待されている。
第3世代に入った再生治療
さて,これまで述べてきたように,歯周組織の再生治療はGTRの概念が示された時期を,私は第1世代と考えている。即ち歯周組織の欠損部に上皮の侵入を阻止するようにし,遮断膜で隔離して再生を起こす空間をつくり出し,周囲からその部位に歯根膜細胞が遊走してくるのを期待するものであった。再生の第2世代とは,このような再生を必要とする空間で歯根膜が遊走してくるのを単に待つのではなく,積極的に成長因子と呼ばれるPDGF,BMP,IGF,FGFなどを用いて,未分化歯根膜細胞を再生が必用な部位に誘導し,増殖させ,さらに,セメント質や歯根膜,歯槽骨をつくり出すように分化させて歯周組織を再生しようとする試みである。現在,実用化され,また試されつつある薬剤は,この範疇にある。さらに,再生治療として第3世代と言える試みがいくつかの研究施設で先端医療として試みられている。これは,歯周組織で言えば,欠損部に再生に必要な「細胞」を直接用いれば再生が直ちに起こるという概念である。持ち込んでくる細胞については2つの考え方がある。1つは骨髄から得られる間葉系幹細胞を用いて組織再生を起こそうとする試みである。もう1つの方法は,歯周組織から得られる局所の細胞を用いる試みである。次回から,この細胞を用いた歯周組織再生について,その研究方法,成績,臨床への応用について述べたい。



















