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歯科再生医療の今 東京医科歯科大学名誉教授 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所・客員教授 石川烈

  • 歯周再生治療への挑戦
  • 歯周病の原因菌の解明
  • 効果的な抗菌薬療法の試み
  • 歯周病と全身疾患とのかかわり
  • 組織再生への歴史的歩み
  • 人工材料による骨移植材
  • 組織再生誘導法の開発
  • GTRから成長因子へ
  • セメント質再生への研究
  • FGFによる歯周組織再生
  • 細胞を用いた歯周組織再生療法
  • 歯根膜細胞シートを用いた再生療法

歯周疾患により破壊された歯周組織,とりわけ歯槽骨の吸収が大きくなると,その罹患歯を保存することはきわめて難しくなる。人生の後半になると,多くの人々がそのために歯を失っているのが現状である。歯周病学という学問分野が欧米のみならず日本にも確立して久しい。歯周治療の治療指針は日本でも1981年に故木下四郎教授が中心となり日本歯周病学会から歯周疾患治療指針が,1995年には日本歯科医師会から「今日の歯周病治療」というガイドラインに近いものがつくられているが,その術式が普遍的に歯科治療の臨床の場で行われているかとなると,まだ"YES"という言葉を使うまでになっていないのが現状ではなかろうか。しかし,多くの臨床医が歯周病に取り組み始めているのも事実である。

プラークコントロールこそ最も重要な処置法
歯周病の治療には2大方針がある。1つは原因因子の除去であり,もう1つは破壊された組織の修復・再生を含むポケット除去または減少である。原因因子の除去の最も大きな要素はプラークコントロールであろう。1965年,当時デンマークにおられたLoe教授がプラーク付着による実験的歯肉炎を起こし,また,それを除去して炎症がなくなることを示し,プラークが歯周病の直接原因であることを証明した。この証明に基づいて,プラークコントロールこそが歯周治療では最も重要な処置法であり,これなくして治療はありえないと言われた。この考え方をnon-specific plaque hypothesis(非特異的プラーク仮説)という。この考え方は,何も間違ったことはなく,現在でも脈々と引き継がれている。1975年ぐらいから現在では侵襲性歯周炎のカテゴリーに含まれているが,若年性歯周炎や急速進行性歯周炎という病態が認められるようになってきた。とりわけ前者は,それ以前は歯周症という病名で呼ばれていたように,永久歯が萌え出するころから切歯,第一大臼歯を中心とした歯槽骨の吸収が認めたられ,ほとんど外見上の炎症がないにもかかわらず病変が急速に進行するのが特徴であった。この病態に細菌学的見地から光を当てたのが,現在UCLAの教授をされているDr.NewmanとフォーサイスデンタルセンターのDr.Socransky博士らであった。彼らは,この若年性歯周炎のなかにActinobacillus actinomycetemcomitans菌が非常に多いことを報告した。

歯周病の原因の多くにP.gingivalisが関与
一方,現在USCに所属するSlots教授は,同じころ急速進行性歯周炎や重度進行性歯周炎にはPorphyromonas gingivalisが多数存在することを見出した。私も偶然に1977年モスクワで開かれたWHOの歯周病の科学グループ会議に招待されて出席し,同席したGenco教授に招かれて翌年,ニューヨークのバッファロー校に滞在したとき,Dr.SlotsやDr.Van Dykeが研究を進めている様子を直接見たり,さらには討論に加わったりした。当時,既にDr.Slotsは,歯周病の原因はほとんどP.gingivalisによるものであることを強調していた。そして,これらの細菌は単に歯周ポケットに多く存在するのみでなく,組織内にも侵入し,時には血流中に入ることも知られている。これらの細菌が生体で多くの作用をしていることは,両細菌の血清中の抗体価が非常に高まっていることでもうなずける。私も東京歯科大学の奥田克爾教授との共同研究で,これらの成果を1985年にJ Dent Resに発表した。この方面での仕事が発展して歯周病が全身疾患,とりわけ心臓血管系疾患や動脈硬化と関連するのではないかと現在研究が進んでいる。さらにDr.Socranskyらは1998年,J Clin Periodontolに歯肉縁下プラークのMicrobial complexという概念を発表し,そのなかでred complexとしてP.gingivalis,B.forsythus,T.denticolaを,また独立した系としてA.actinomycetem comitansのserotype bを挙げて,最も組織破壊に関与する歯周病原性細菌として示した。このような考え方をspecific plaque hypothesis(特異的プラーク仮説)という。この研究成果は歯周病の細菌学の最も信頼されている文献となっている。2006年に大阪で行われた日本歯周病学会において,臨床医の吉野敏明先生が歯周病態とこれからの細菌の関連性についてPCR法などを用いて測定結果を講演したが,会場いっぱいの多くの聴衆が聞き入っており,関心の高さが感じられた。このように歯周治療を成功させるために歯科医療サイドで行わなければならないこととして,これらの歯周病原性細菌を口腔内から除くことの重要性が示された。



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