これまで述べてきたように,歯周病は単に口腔内で歯を失う原因になるだけではなく,全身にも強く影響を及ぼし,最近では心臓疾患や末梢血管系の病変にも関連し,動脈硬化の関連因子として疑われている。このような疾患にかからないようにすることと同時に,疾患を早期に治療することが極めて大切なことは明らかである。
歯周病の特徴「4つのS」
そして,歯周病の特徴は4つのSで表すのが最も解りやすいと思われる。最初のSはSilent DiseasesのSであり,自覚症状を伴うことが少なく,つい放置されがちである。2つ目のSはSocial Diseases であり,国民の大半が罹患している。3番目のSはSlowly Progressiveであり,多くの場合,ゆっくりと進行するので十分治療を行うことはできる。最後のSはSelf Controllableであり,自己管理が大切で生活習慣病として扱われるゆえんである。さて,重度歯周炎に罹患して組織破壊が高度に進行した症例では,これまで行われてきた歯周治療では抜歯にまでは至らなくても,一度失われた歯周組織は元の状態に回復することはなかった。治療終了後に機能障害が残りやすく,また,審美性が失われ,患者さんから求められている美しい歯列を復活させるという要求に応えることが難しかった。歯周組織の欠損部を再構築させるため,歴史的にさまざまな試行錯誤がされてきた。現在まで,骨補填移植材やさまざまな薬物による歯根表面処理,組織再生誘導法,BMP(Bone Morphogenetic Protein)やbFGFなどの成長因子,さらにはPRP(多血小板血漿)やエムドゲインなどの再生治療法が登場し,歯周組織を再生させるのに有効との報告が見られたり,また批判されたりしてきた。これらの歴史的な推移について触れたい。
骨補填材料の開発
歯槽骨の吸収は歯周炎で起こる特徴的な症状で,その欠損部に何らかの材料を補填し組織再生を起こそうと古くから試みられていた。口腔内から採取した皮質骨をチップ状にして欠損部に移植した報告が1965年に発表された。その後,1967年に口腔外からの材料として腸骨骨髄を骨欠損部へ移植する試みがSchalhornらによって行われた。前者は十分な量を得ることができないことが障害になり,後者は骨性癒着や歯根吸収を起こし成功しなかった。現在,ヒトで組織学的に歯周組織への再生誘導が確認されているものは,自家骨移植と脱灰凍結乾燥他家骨(De-mineralized Freeze- Dried Bone Allografts:DFDBA)と呼ばれているものである。米国では後者は市販されており,歯周治療の再生療法のみならずインプラントの際の骨の欠損部などに広く用いられているが,わが国ではその販売は承認されていない。そのDFDBAについても,骨を再生する能力は全くないという意見や,その反論が学術誌を賑わせたが,現在ではDFDBAに含まれるBMPなどのサイトカイン類が作用して骨再生に作用すると考えられ,市販のロットによりその有無で効果が異なると考えられている。
組織再生に必要な細胞,成長因子,足場材
わが国で市販されている生体骨補填材としてウシ由来の骨を焼結してつくられた骨移植材があるが,これを用いたとき,臨床的にある程度の効果が認められるとしても,組織学的な再生効果は認められていない。しかしながら,その理由だけでその製品が意義のないものであるとは言えない。現在,組織再生に必要な三要素として細胞,成長因子,足場材(Scaffold)があげられている。これらの生体補填材がそれ自身で再生能力がなくても,必要な細胞が組み込まれ成長因子や血液が供給されるようになると,現在それ自体に再生効果が認められない材料でも再生の機構に役立つ可能性は十分にある。次回に述べる人工的な骨補填材の歴史的な流れは,まさに再生治療の足場材の進歩とともに歩んでいる感がある。



















