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歯科再生医療の今 東京医科歯科大学名誉教授 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所・客員教授 石川烈

  • 歯周再生治療への挑戦
  • 歯周病の原因菌の解明
  • 効果的な抗菌薬療法の試み
  • 歯周病と全身疾患とのかかわり
  • 組織再生への歴史的歩み
  • 人工材料による骨移植材
  • 組織再生誘導法の開発
  • GTRから成長因子へ
  • セメント質再生への研究
  • FGFによる歯周組織再生
  • 細胞を用いた歯周組織再生療法
  • 歯根膜細胞シートを用いた再生療法

日本ではハイドロキシアパタイトセラミックス(アパタイト)が1970年代より人工歯根として開発され,研究が進められた。その結果,アパタイトは骨との結合が強く,人工歯根として用いたとき,強い咬合力がかかっても周囲組織に炎症や骨吸収を起こすことなく十分機能することが明らかにされた。また,そのインプラント歯頸部では口腔粘膜上皮と上皮性付着を起こし,組織親和性が高いことも示された。

感染が起こりやすかった従来の骨補填材
1978年には,このアパタイトが骨補填材として市販された。この場合,生体との親和性と操作性を考慮して,多孔質アパタイト顆粒として用いられた。この材料は単独で良好な骨伝導能を有し,動物実験では補填された部位で良好な骨形成が見られたので,このアパタイト顆粒の用途として歯周疾患による骨欠損部への充填が行われた。アパタイト顆粒は非吸収性であり,一度充填されるとその部位に充填されたままの形で永久に留まってしまう。臨床で使ってみると,ある程度の症例では好結果を示したが,歯周組織は最も不潔になりやすく感染が起こりやすい部位なので,長期的な経過症例では充填したアパタイト顆粒が感染で汚染され病変が再発を起こしやすく,良好な臨床結果が得られなかった。同じような材料に結晶化ガラスがあった。無菌的な条件が整っていても臨床の場で長期の好成績を得ることは容易ではなかった。アパタイトの結果を報告したときに,故秋吉正豊教授から受けた示唆が今でも想い出される。口腔内にこのような人工材料を用いる際には,感染や炎症の影響を少なくするために,できる限り生体吸収性のある材料を考えたほうが好成績を得られる可能性が高いという示唆であった。実際,私どももその後,2相性リン酸カルシウム骨補填材(BCP)へと研究を進めた。この材料はβ-TCPとアパタイトの混合体で,β-TCP/HA比が80/20の場合,術後6か月で顆粒はほとんど消失し,顆粒充填材に相当する領域で緻密な新生骨が再生することを見出した。しかしながら,この材料は最終的に製品化されずに研究は中断してしまった。

吸収性アパタイトに歯周組織再生の可能性
吸収性アパタイトとしては,三燐酸カルシウム(Tricalcium phosphate:TCP)がある。この材料は燐酸カルシウム系セラミックスの1種であるが,生体内で吸収され周囲の骨組織からの骨伝導がうまくいけば新生骨に置換される。焼成温度の違いにより,吸収の速やかなβタイプはβ-TCPとして製品化され,単体で歯周治療に応用されている。吸収速度の遅いαタイプは米国で開発され,骨セメントとして用いられている。私どもはこの材料を歯周組織の補填材に用いられるように,S社と共同で製品化の努力をしている。その特徴は単燐酸カルシウムとα-TCPと,炭酸カルシウムからなる粉末と,燐酸ナトリウム液を無菌的に混和し,ペースト状にしたものを欠損部に注入できることである。注入された材料は10分程度で硬化し,一旦硬化するとその性質は天然骨のミネラル相とほぼ同一になるという特徴を持っている。動物実験結果はJ.Periodontolの2006年6月号に最新のデータを発表してあるが,本材を欠損部に注入して3か月後には骨と結合したり辺縁が骨と置換していた。大変興味あることに歯はいつもわずかに動揺しているので,本材と歯は接着せず,わずかなすき間ができ,そこに歯根膜組織が入り込み,セメント質や歯根膜を含めた組織の再生が起こっていた。本実験は欠損部歯根を汚染させ,ヒトの歯周炎に類似した条件で行われたが,以前報告した歯槽骨を外科的に除去して得られた結果と同様の好成績であった。これまでの人工骨移植材料は顆粒状の固体であり,その骨伝導能により骨組織への応用では有効であっても,セメント質や歯根膜といった歯周組織を再生するのは難しかった。本材ではこの再生を可能にする能力があるかもしれない。いずれにせよ人工骨移植材料は,歯周組織再生を直接期待するよりも,欠損部のフィラーや成長因子の担体,あるいはScaffold(足場)の役割を果たすものとしての今後の有用性が考えられる。



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