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歯科再生医療の今 東京医科歯科大学名誉教授 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所・客員教授 石川烈

  • 歯周再生治療への挑戦
  • 歯周病の原因菌の解明
  • 効果的な抗菌薬療法の試み
  • 歯周病と全身疾患とのかかわり
  • 組織再生への歴史的歩み
  • 人工材料による骨移植材
  • 組織再生誘導法の開発
  • GTRから成長因子へ
  • セメント質再生への研究
  • FGFによる歯周組織再生
  • 細胞を用いた歯周組織再生療法
  • 歯根膜細胞シートを用いた再生療法

私が東京医科歯科大学第二歯科保存学講座(歯周病学)教授に就任して間もなく,日本歯周病学会を開催するように学会から依頼された。1987年10月,第30回日本歯周病学会秋季総会を東京・市ヶ谷の日大会館で開催した。そのときの特別講演を免疫学の多田富雄教授,韓国Seoul大学のChoi教授に加え,デンマーク・オーフォスのKaring教授にお願いした。彼こそが歯周組織再生法として組織再生誘導法(GTR法)を確立した立役者の1人だからである。

スカンジナビアの研究者らによって研究
大学院時代の1968~70年にかけて休学してヨーロッパに留学したとき,最初にオーフォスにLoe教授を訪問した。そのとき彼は大学院生として同教授の下で研究に励んでいて,紹介されて以来の仲であった。1970年後半から80年にかけてLindhe教授,Nyman教授,Karing教授らスカンジナビアのメンバーは,歯周組織の再生のメカニズムを明らかにしようと試みていた。彼らはイヌを用いた実験で,歯周炎に罹患した歯にスケーリングルートプレーニングを行った上部と歯根膜を有する下部を持つ歯根を移植し,3か月の治癒期間後の観察で下部歯根は歯根膜の再確立を認めたが,上部はいずれも骨性癒着と歯根吸収を起こした。この結果は骨に由来する肉芽組織は結合組織性付着を形成する能力を持たないことを示した。歯肉結合織についても歯根を横にして同様に調べた結果,結合性付着を形成する能力を持たないことを明らかにした。その後に行った実験で,歯周炎罹患歯根を抜去移植せず歯根面を保持したまま歯肉弁を被った実験では,歯根上部に相当量の結合織付着を認めた。そのほか多くの実験を行ったが,彼らの組織再生に関する研究成果により,歯周炎のために失われた組織を回復させようとする歯周外科治療で,治癒期間では歯根表面と他の組織との接触を防止することと,歯根膜組織の歯冠側方向への増殖を促進させることが必要であると結論づけた。このconceptを基に,治癒期間中に歯肉上皮の根面での増殖を防ぎ歯肉由来の肉芽組織と歯根面との接触を阻止する遮断膜を設置することで新付着を誘導できると考えた。この考えを証明するため,実験的歯周炎を起こした後,キュレッタージを行い,さらに歯冠を切断した後テフロン製の膜で被い,次いで歯根を完全に被覆した。治癒後の組織標本ではテフロン膜で被われた歯根面は膜のない対照群に比べて新付着の量が遥かに多かった。このような実験を基にして,彼らはヒトにおいて一度喪失した歯の支持組織を再生させる可能性を持つGTR法を開発した。

予知性の高い歯周外科法として定着
1986年には同じグループのGottlow博士を加えたメンバーで,実際の臨床で11歯の歯周疾患罹患歯をGTR法で治療した。そのうちの4歯を治療後に抜去して組織学的に分析し,真の結合織性付着の獲得が認められたと報告した。GTR法臨床応用の初期ではミリポアフィルターが遮断膜として用いられたが,Gore-tex社の開発により臨床的,生物学的に歯周組織に適したさまざまの非吸収性半透膜:e-PFFE膜がつくられ,今日まで多く用いられている。さらに,膜の形態が崩れないようにしたチタンフレームにより補強されたものもつくられた。また,膜除去手術の不必要な吸収性膜が開発され,コラーゲン膜を主体にしたものやポリ乳酸系を主体にしたものなど多岐にわたっている。現在ではGTR法は予知性の高い歯周外科法として定着し,わが国では私たちも含めた多くの大学病院で高度先進医療の承認を受け,保険治療に加えてこの手技に関する必要な費用を患者サイドで支払うことで治療が受けられることになっている。この術式は歯周組織の再生に学問的基盤と素晴らしい臨床効果を示したが,その問題点は,長期にわたって遮断膜を口腔内に設置するためメンブレンによる術後感染が高いことや,メンブレン設置に当たっての手技が習熟を要することなどの点があげられる。実際の臨床上でまだまだ解決されるべき点が指摘された。



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