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歯科再生医療の今 東京医科歯科大学名誉教授 東京女子医科大学 先端生命医科学研究所・客員教授 石川烈

  • 歯周再生治療への挑戦
  • 歯周病の原因菌の解明
  • 効果的な抗菌薬療法の試み
  • 歯周病と全身疾患とのかかわり
  • 組織再生への歴史的歩み
  • 人工材料による骨移植材
  • 組織再生誘導法の開発
  • GTRから成長因子へ
  • セメント質再生への研究
  • FGFによる歯周組織再生
  • 細胞を用いた歯周組織再生療法
  • 歯根膜細胞シートを用いた再生療法

歯周治療において,組織再生誘導法(GTR法)が導入されたことは画期的なことであった。これまで歯周外科で避けられないと思われていた「長い接合上皮による修復」と呼ばれる治癒形態から,セメント質,歯根膜,歯槽骨をも復元可能な「再生治療」への道が開かれたからである。

術後感染の防止のためにも必要な治癒期間の短縮
実際の治療に当たっては,ゴアテックス社のe-PTFE膜による非吸収性膜が市販され,さらにそれを補給したチタンフレームが入ったものなどもつくられ現在に至っている。これらは単に歯周治療に用いるだけでなく,即時型インプラントの際や,インプラント埋入処置時に骨が十分でない部分を被うguided bone regeneration(GBR)として用いられるようになり,インプラント治療でも欠かせない処置の1つとなっている。また,ポリ乳酸系やコラゲン膜による吸収性膜も市販されている。吸収性と非吸収性の膜の優劣はつけ難く,摘出のための再手術が必要な非吸収性の場合,摘出時に治癒が確実に起こっているか否か確認できる。一方,吸収性膜の場合,1回の治療で終了するが,そこで再生が確実に起こっているか否かは不明で,X線などで確認できるまでには半年以上の経過が必要となる。さらに,歯周組織再生の方法が確立したといっても,膜を設置した後,約6~8週間感染を起こさないようにしないとよい予後を得られないことの難しさをだれもが痛感させられた。口腔内は不潔になりやすく,感染も起こりやすい部位である。欧米では術後クロルヘキシジンの含嗽が当然のことのように行われているのに対して,わが国では禁止されており,はるかに抗菌力の弱い薬剤を用いることが強いられている場合もあった。また,当初この方法が万能のように思われていたが,上顎の大臼歯部や下顎の臼歯での3級(歯根分岐部が完全に通過する)欠損では,必ずしも良い成績が得られないことも明らかになってきた。これらの問題を解決する最善の方法は,治癒期間の短縮と再生に必要な細胞の誘導をより強く行うことであると皆が気付いた。そこで失われた歯周組織を再生させるために歯根膜細胞を欠損部へ遊走させ,そこで増殖や分化を起こそうという試みが始まった。

骨形成因子BMPも臨床応用が可能に
既に血小板由来成長因子(PDGF)とTGF-βの組み合わせは,創傷治癒促進因子として骨や皮膚での重要な役割を果たすことや,これを欠損部に投与すると経過がよいことも知られていた。PDGFとTGF-βを最も高く含有しているのが血小板である。血小板を取り出す遠沈法も確立し,無菌的に臨床で用いることが可能となった。血小板はわずかの血漿内に濃縮されるが,これがIGFとフィブリンの供給源となることもわかってきた。このようにしてつくり出されたのがPlatelet-rich plasma(PRP)である。1990年代初めには,既にPDGFとインスリン様増殖因子(IGF)の合剤を用いて歯周組織の再生を促進させようと試みられた。骨形成因子であるBone Morphogenetic protein(BMP)については,1965年にUristによって発見されて以来,その生化学的精製が進められていたが,1988年WozneyらによってヒトBMPがクローニングされ,その遺伝子構造が明らかになり数種類存在することもわかり,さらにリコンビナントヒトBMPがつくられるようになり,その臨床応用が可能となった。

歯根膜やセメント質の再生も
私どもも山之内製薬(現在のアステラス製薬)からrhBMPの供与を受け,歯周組織の欠損部に応用する試みを行った。ビーグル犬の下顎臼歯部に3級の骨欠損をつくり,ヒトの進行した歯周炎にした状態でrhBMPをPGSに加えて埋殖したところ,有意に歯周組織が再生することを認めた。その後,さらに研究が進み,rhBMP-2は歯槽骨のみならず歯根膜やセメント質の再生にも効果的であることが示された。しかし,これについてもまた問題があった。



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