BMP-2について
Bone morphogenetic protein-2(BMP-2)を用いると骨形成が起こることは既によく知られていた。これを用いて歯周組織の再生を起こそうとすると,セメント質,歯槽骨,歯根膜がバランスよく再生しないと臨床的に用いることはできない。実際にヒトリコンビナントBMP-2を用いた動物実験では,私どもも含め多くの研究者が報告したように,歯槽骨の再生は起こる。しかし,セメント質の再生となると,骨で見られるような再生は起こっていなかった。その結果,セメント質に埋入する歯根膜の形成も不確実となる。そのうえ骨形成能が非常に強いと,骨は歯根と接して形成される。以前からよく知られていたように,骨形成は骨吸収と添加のカップリング現象として起こる。歯根面上に吸収を起こす破歯細胞ができると,これに対応するセメント芽細胞または骨芽細胞がないと歯根の吸収が起こってくる。この現象は,腸骨からの骨移植を歯周組織に行うと歯根の吸収が起こることとして知られていた。このような副作用をなくすために,北海道大学の久保木教授らはコラーゲン膜を歯面で覆い,直接の接触を減らすことにより回避できると報告されている。また,英国のKingらはBMPの濃度を低くすることにより,セメント質の形成を促進できると主張していた。しかしながら,臨床ではこのような注意が守られないことが多い。それに実際の臨床の場では歯頸部付近はプラークで汚れやすいので,炎症細胞浸潤が起こる。これらが作用して,BMP投与後にセメントエナメル境付近での吸収が起こることが認められた。臨床では,わずかであっても副作用が出てしまうと問題となり用いることができない。このため,BMP-2は歯周組織再生への治療薬としては没となってしまった。しかし,最初に述べたように,骨形成能は非常に高い。最近米国では,BMP-2をインプラントの植立時の骨増生剤として承認されて市販されるようになった。インプラントではここに述べたような歯根の吸収は起らないので,骨形成能だけが有効になってくるからである。
そのほかの歯周組織再生材
そのほか米国では,GEM-21としてβ-TCPと血小板成長因子であるPDGF-BBを組み合わせた材料も承認されている。2006年のJ.Periodontolに多施設で行われた臨床成績で報告され,その有効性が認められた。ほとんど副作用がないためである。しかし,まだ市販後の臨床成績については報告されていないので,今後を見守る必要がある。わが国に目を向けると,歯周組織再生剤として承認されているのは豚の歯胚から得られたアメロジェニンを主体としたエナメル蛋白の"エムドゲイン"がある。私どもがBMPの研究をしているとき,スウェーデンでこの材料についての研究が行われていた。このエムドゲインの製造元の初代社長となった人はスウェーデン大使館の科学アタッシュをしており,私どもは多くの情報を得ていた。すなわち,歯根先端で新生象牙質表面へのアメロジェニンの沈着が無細胞セメント質の形成に先行して起こることから,セメント質の再生にエナメル蛋白が深く関与している。このエナメル蛋白は歯胚より酸性下で抽出され凍結乾燥したものであり,最初ヨーロッパで製品としての承認を受け,次いでFDAで認可され,厚生省の承認を受けて市販された。この歯周組織再生剤のこれまでの基礎的な研究成果や臨床成績が,Journal of Clinical Periodontologyの1997年24巻9号に「EMDOGAINの歯周組織への生物学的アプローチ」としてまとめられた。市販に当たってだれもが正しくこの製剤を理解できるようにしたいという依頼を受け,この号の邦訳をした。さらに臨床試験はこの材料については行われなかったが,実際の治療に用いたり市販後副作用調査などでも協力をした。この材料は最初EMDとPGAから成る基材を混合させて用いる方法であったが,未知のウイルスの感染が起こる可能性があるとして,現在はこれらが混合され滅菌された材料として市販され,臨床に用いられている。この材料がさまざまな生物学的効果を持つことは,私が編集委員長をしているJ.Periodont Resにも多く報告されている。現在,この材料に加えて,日本では線維芽細胞増殖因子(FGF)が歯周組織再生の治療薬として第3相の治験が行われているので,次号はこれについて述べたい。



















