X線写真撮影に関する基本的な姿勢
他の検査に比較して,X線診査は大きな問題点を抱えています。それは,一過性にはとどまらない放射線の被曝です。治療を行ううえで必要な検査を行うという本来の姿が忘れられてきているように思います。例えば,全く偶発症が疑われない症例に対して,埋入直後にX線写真撮影を行い,インプラントの埋入位置や角度などを知ることによって自己満足に陥ったり,自分の能力を誇示するために使ったりすることは避けたいものです。
治療計画立案材料としてのX線写真
診断ならびに治療計画を立案するうえでの持ち駒が多いほど,治療中の危険性を減らせるだけでなく,治療結果がより好ましいものに近付きます。骨組織に支持を求めるインプラントでは,各種X線写真が最も重要な情報を提供してくれますが,それらの資料が不完全なものであったらどうでしょうか? インプラントがオッセオインテグレーションを示さないばかりか,患者に重篤な後遺症をもたらすことにもなりかねず,患者だけではなく医療従事者にとっても大きなリスクとなります。また,患者にそれらの資料を用いて平易に説明することは,それ以降の治療への理解を深めていただくための助けにもなることを経験してきました。しかし,従来のアナログ・パノラマX線写真を例に取ってみると,頭位の設定が不適切なために正しい拡大率が得られていない,あるいは増感板が経時的変化を来していたり,現像液が劣化しているために,鮮明なコントラストが得られない資料を見ることがままあります。いかなる症例においても,多くの情報を提供してくれるパノラマX線写真は不可欠ですが,症例によっては,より多くの情報を得やすいCT撮影も必要になります。では,それらの資料から何を学び取るのかを考えてみましょう。まず,インプラント埋入予定部位の断面形態,骨量,骨質,対合歯との関係,さらにそこに隣接する歯牙をはじめとする解剖学的な構造や病変などの把握ができます。これらの情報は,インプラントの適用がその症例にとって好ましい治療法か,できるとすればどのような種類のインプラントをどこの部位に何本,どのような位置的関係で埋入することが可能なのかを判断するのに,有効な材料になります。CTに関しては,外部の施設に撮影を依頼し,再構築されたものが焼き付けられたフィルムを入手した際には,(1)資料がその患者のものに間違いがないか,(2)その拡大率が等倍か,(3)歯列弓に対して法線状に1mm間隔で切断されて再構築されているか,(4)前後左右が間違いなく焼き付けられているか―などの点を確認しなければなりません。鮮明でなく,情報が得られにくいCTからは,被曝ならびに出費に見合った結果が得られず,患者に対する冒涜とも思えます。
インプラント埋入後のX線写真
通常は,インプラント埋入直後にX線写真撮影をする必然性はありません。しかし,神経を損傷したことが疑われるなど,なんらかの対処が求められる場合には,躊躇することなく可及的に早い時期に撮影すべきでしょう。その画像からは隣在器官への侵襲の状況がわかり,その後の対策として静観すべきか,あるいは早期の対処を行うかといった治療計画の立案に役立ちます。そして,その資料をもとに経験豊富な歯科医師の意見を求めることが,先生方のダメージを最小限に食い止めます。また,まれなことでしょうが,のちに患者からあらぬクレームを付けられた場合には,X線写真が公的な有力証拠になりますので,フィルム面への直接描き込みは避けましょう。適切に応用されるならば,今日のインプラントでは周縁骨の吸収がきわめて少ないことが知られていますので,X線写真は数年に一度の撮影で十分でしょうが,違和感を生じるなど問題を認めた場合には,直ちに撮影して対処してください。












