【家庭】

主人在宅ストレス症候群

夫が家にいるのがつらい
−高血圧、胃かいようなどに−


 定年になった夫が常に家にいるようになったことで、妻が、強いストレスを感じ、体に変調を来すことがある。黒川内科(大阪府)の黒川順夫院長(心療内科)は、こうした症状を「主人在宅ストレス症候群」と名付け、治療に当たっている。

● 強い束縛感持つ

 黒川院長は、患者に対し、診察時に、体の症状だけではなく、心理的背景も詳しく尋ねることにしている。この時に、家庭の事情も聞いているが、15年ほど前から「定年退職した夫がずっと家にいるようになってから、体調が悪くなった」と話す女性が目立ち始めたという。また、体の病気で受診した患者の中にも、何度か話すうちに「夫が家にいるのがつらい」と漏らすケースがある。
 患者にこのような症状が出るのは、定年後に夫が家にいるようになってからの場合が多いが、中には夫が脱サラして自宅で仕事を始めてからという40代の主婦のような場合もある。
 患者に共通しているのは、「夫は何もしないでテレビばかり見ている」「3度の食事の用意が大変」「あれこれと指図される」「細かく干渉される」など、日常生活で強い束縛感を感じていることだ。
 亭主関白型の夫と、自分を抑えて夫に従う妻という構図で、高圧的な夫に気持ちを伝えられないため、精神的なストレスが体の弱い部分を攻撃するようだ。
 患者の症状は、ストレスと強い関係のある高血圧や胃かいよう、十二指腸かいよう、気管支ぜんそく、過敏性腸症候群などのほか、脱力感や冷や汗、震えなどが起きる低血糖症候群や、ほかにも慢性肝炎とさまざまだ。

● 1人で外出を

 治療は、それぞれの症状に応じた薬に加えて、抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などの薬と、カウンセリングが必要になる。黒川院長は、リラックス法の1つである自律訓練法も指導している。
 「夫を気にせずに、趣味の会やカラオケ、旅行などに1人で外出することを勧めています。カウンセリングで自分の気持ちを話したり、外出したりするだけで症状が和らぐ人もいます。夫との関係を変えるのは難しいですが、決してあきらめないでほしい」と黒川院長。
 治療には、夫の協力も欠かせないが、カウンセリングを受ける夫は5割に満たないのが実情だ。しかも、カウンセリングを受けて、紳士的な態度でカウンセラーの助言を聞いているように見えても、妻への接し方が変化しないケースもある。
 黒川院長は「若いうちから夫婦で話し合い、お互いを思いやる関係を築いておけば、主人在宅ストレス症候群は防げるはずです」と話している。