【婦人】

水中出産

楽な姿勢で心身共にリラックス
−筋肉の緊張和らぎ、陣痛も軽い−



 温水の中で出産する水中出産には、通常の出産方法にはない特徴がある。済生会宇都宮病院(栃木県)産婦人科の飯田俊彦医長は「楽な姿勢を取れるし、温水によって心身ともにリラックスできます」と話す。

● 浮力で姿勢の変換容易

 出産は、多くは分娩(ぶんべん)台の上で行われているが、姿勢としては決して楽ではなく、赤ちゃんにとっても出てきやすい姿勢ではない。
 過去には、ひざを曲げて座る、四つんばいになるなど、骨盤が広がって、赤ちゃんが自然に出てきやすい姿勢で行われていた。しかし、こういった姿勢を取り続けたり、この状態から姿勢を変換したりするのは容易ではない。
 入浴や水泳で経験するように、水の浮力を利用すると、姿勢の変換が簡単にできる。体が軽く浮く水中出産の特徴の一つは、重力の影響を少なくして、自分にとって楽な姿勢を取れることにある。
 もう一つの特徴は、体と心のリラックス。温水に入ると血液の循環が良くなり、筋肉の緊張が和らいで陣痛が軽くなり、産道の筋肉もほぐれる。体の緊張が解けると心の緊張も解ける。

● おぼれる心配ない

 済生会宇都宮病院では、1996年から水中出産に取り組んでおり、年間に10人ほどが水中出産している。
 「難産は、体と気持ちが互いに緊張を強め合って起きるとも考えられます。水中出産は、体がリラックスすると心もリラックスするという、いい環境をつくります」と飯田医長。
 出産する際は、陣痛の間隔や子宮口の広がり具合などの条件が整ったときに温水に入る。温水の温度は30度から34度。生まれるまでずっと入っているわけではなく、1回60分を限度としている。陣痛を和らげる目的で入る場合もある。
 赤ちゃんは、待機している医師とスタッフがすぐに水中から取り上げるので、赤ちゃんがおぼれる心配はない。
 なお、水中出産は、骨盤が狭い、卵巣に病気があるといった母体の事情や、逆子や多胎児などの胎児の状態によってはできない。また、家庭では、助産師がいる場合でも、緊急時の医療行為がすぐにできないとか、水質の管理が難しいなど、行いにくい面がある。