〔シカゴ〕ハーバード大学公衆衛生学(ボストン)のMaryse F. Bouchard博士らの研究によると,鉛の血中濃度が高い成人は,一般に安全とみなされるレベルの曝露であっても,大うつ病とパニック障害になりやすいという。詳細はArchives of General Psychiatry(2009; 66: 1313-1319)に発表された。
パニック障害は5倍に
鉛はよく知られた神経毒で,空気や土壌,ほこり,水など環境中の至るところに存在する。ガソリンの脱鉛は平均血中レベルを劇的に減らしたが,塗料,工業プロセス,陶器,汚染された水などの曝露源が残されている。
Bouchard博士らは「低レベル鉛の神経毒作用に関するこれまでの研究では,子宮内と乳幼児期に焦点が合わされていた。また,成人における鉛の神経毒作用についてはおもに職業的曝露との関連で,一般人口より一桁高い濃度の曝露に関して研究が行われてきた」と述べている。
同博士らは,1999~2004年の米国保健栄養調査(NHANES)に参加した成人(20~39歳)1,987例のデータを分析。被験者は血液検査のほか,うつ病,パニック障害,全般性不安障害の有無についての聞き取り調査を受けた。
大うつ病性障害の診断基準を満たした成人は134例(6.7%),パニック障害は44例(2.2%),全般性不安障害は47例(2.4%)であった。鉛の平均血中濃度は1.61μg/dLであった。鉛の血中濃度が最高五分位(2.11μg/dL以上)の者では最低五分位の者(0.7μg/dL以下)に比べ,大うつ病性障害のオッズ比(OR)が2.3倍,パニック障害のORは約5倍であった。
喫煙は鉛の血中濃度に影響するため,同博士らは628例の喫煙者を除外して非喫煙者で追加分析を行った。その結果,非喫煙者でも,最高と最低の鉛の血中濃度間のリスク上昇は大うつ病性障害で2.5倍,パニック障害で8.2倍であった。
うつ病やパニック障害に関連するカテコールアミンやセロトニンなどの神経伝達物質は脳内プロセスに関与しているが,低レベル鉛曝露はこのプロセスを攪乱させる,と同博士らは推測。「今回の研究結果から,鉛の神経毒性が一般にほとんどあるいは全くリスクを伴わないとみなされる低レベルであっても,精神保健アウトカムに影響する可能性があることがわかった。環境中の鉛曝露を減らすための方策を検討すべき時期に来ている」と結論付けている。
鉛の血中濃度の高さが大うつ病,パニック障害と関連
[ 2010年1月28日号]
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