心拍上昇伴う高強度の有酸素運動で
〔シカゴ〕軽度認知障害は,加齢に伴う思考能力や学習能力および記憶力の自然な変化と認知症の中間に位置する状態である。認知症を発症する人が一般住民では毎年1~2%であるのに対して,軽度認知障害者では10~15%にも及ぶ。このようななか,運動が軽度認知障害の予防や認知機能改善に役立つとする2件の研究がArchives of Neurology に発表された。
認知機能改善効果は女性で顕著
ワシントン大学と退役軍人局ピュージェット湾保健医療システム(ともにワシントン州シアトル)のLaura D. Baker准教授らは,6か月間の高強度有酸素運動プログラムにより,軽度認知障害者の認知機能が改善すると同誌(2010; 67: 71-79)に発表した。
同准教授らは,軽度認知障害の成人33例(男性16例,女性17例,平均年齢70歳)を対象としたランダム化比較試験を実施した。23例は高強度有酸素運動群に割り付けられ,トレーナーの監視のもと,高強度の運動を1日45~60分,週4日行った。10例を対照群とし,トレーナーの監視のもと同じスケジュールでストレッチ体操を行ったが,心拍は低い値を維持した。フィットネステスト,体脂肪の分析,代謝マーカーを調べるための血液検査および認知機能の測定は,試験開始前,試験中と試験終了の6か月後に実施した。
計29例が試験を完遂した。対照群と比べて高強度有酸素運動群では全体的な認知機能の改善が認められた。男女別では健康の改善度は同等であったが,認知機能の改善効果は女性でより顕著であった。同准教授らは「性差は,運動が代謝に及ぼす効果と関係があるのかもしれない。運動がインスリンやブドウ糖の利用や産生に及ぼす影響とストレスホルモンであるコルチゾルに与える影響は,男女で異なるからである」と説明。さらに「有酸素運動は,多数の身体的便益と関連する費用効果に優れた習慣である。今回の研究結果から運動が成人の軽度認知障害者の認知機能を改善することが明らかになった。心拍上昇を伴う行動的介入を一定間隔で6か月間実施したが,費用もかからず,薬物治療で起こるような有害作用もない。軽度認知障害者の認知機能を改善するにはこの方法で十分であった」と結論付けている。
中等度運動で32~39%リスク低下
一方,メイヨー・クリニック(ミネソタ州ロチェスター)のYonas E. Geda博士らは,中年期以降に中等度の運動をすることで,軽度認知障害リスクを軽減できると同誌(2010; 67: 80-86)に発表した。
同博士らは,同クリニック加齢研究参加者のうち認知症でない1,324人を対象に,運動に関する質問調査を2006~08年に実施。専門家によるコンセンサス委員会が質問票の回答を評価し,認知機能正常と軽度認知障害に分類した。
その結果,198人(年齢中央値83歳)が軽度認知障害,1,126人(同80歳)が正常認知機能と判定された。早歩き,エアロビクス,ヨガ,筋力トレーニング,水泳など中等度の運動を中年あるいは中年以降から行っていると回答した人では,軽度認知障害と判定される率が低かった。中年からの中等度運動は,軽度認知障害リスクを39%低下させた。また,中年期以降からの中等度運動でもリスクを32%低下させた。これらの研究結果は男女いずれでも一致していた。
しかし,ボーリング,ゆっくりとしたダンス,カートを利用したゴルフといった軽度の運動やジョギング,スキー,ラケットボールのような激しい運動と軽度認知障害リスク低下との間に独立した関連性は認められなかった。
同博士らは,運動は神経保護化合物の産生,脳血流の増大,ニューロンの発達と生存の改善,心血管疾患リスクの低減などを介して軽度認知障害リスクを低減する可能性があると指摘。さらに「もう1つの可能性として,運動が健康的なライフスタイルのマーカーかもしれない。定期的な運動を行っている人は,食習慣,事故防止,予防的介入の順守,医療へのコンプライアンスなどに関しても自分を律する傾向があり,健康によい行動を取っていると考えられる」と述べている。
同博士らは今後の研究で,運動と軽度認知障害リスク低下との関連性を検討し,両者の因果関係に関する追加情報を得ることが必要としている。
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[ 2010年2月25日号]
記事タイトル[掲載号]
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