〔ロンドン〕英国とフィンランドの研究から,インペリアルカレッジ(ロンドン)公衆衛生学部のAlina Rodriguez博士らは「両手が自由に使える両手利きの小児では,右利きあるいは左利きの小児と比べて,小児期に精神衛生,言語,学業上の問題を呈する確率が高い」との研究結果をPediatrics(2010; 125: e340- e348)に発表した。
ADHDの重症度が高い
両手利きの人は100人に約1人存在する。筆頭研究者のRodriguez博士らは,両手利きの影響を調べるため,北フィンランド在住の両手利きの小児87例を含む7,871例の前向きデータを調査。質問票を用いて7~8歳の時点と15~16歳に達した時点で小児を評価した。
小児が8歳の時点では,言語能力,学業成績,行動を評価するように親と教師に依頼した。教師は読み書きと算数に問題があるか否かを報告し,小児の学業成績を平均以下,平均,平均以上のいずれかで評価した。
また,15~16歳の思春期に達した時点では,親と本人が質問票に記入した。本人は自分の成績を同級生と比べて評価し,親は注意欠陥多動性障害(ADHD)の症状を発見するために広く用いられている質問票を使用して小児の行動を評価した。
その結果,8歳の時点で両手利きの小児では,右利きの小児と比べて言語障害を呈し,学業成績が劣るリスクが2倍高いことがわかった。また,両手利きの小児が16歳に達すると,ADHDの症状を示すリスクが倍増することが明らかになった。さらに両手利きの青少年の場合,右利きの青少年よりもADHDの症状の重症度が高い可能性が認められた。ADHDは学齢期の小児と青年の3~9%が罹患していると推定されている。
また,今回の研究から,両手利きの青少年は,右利きまたは左利きの青少年と比べて,言語障害を有する割合が多いことがわかった。この結果は,両手利きと失読症との関連性を示した過去の研究結果と一致している。
両手利きになる理由についてはほとんど知られていないが,利き手は脳の半球と関連していることがわかっている。これまでの研究から,生まれつき右手を使うのが得意な人は脳の左半球が優勢であることが示されている。
一部の研究では,両手利きでは大多数の人に見られる脳の半球の優勢パターンとは異なっていることが示唆されている。両手利きの場合,どちらかの半球がはっきりと優勢であることはない。ADHDは脳の右半球の機能低下と関連していることを示す研究が存在するが,これまでの研究結果から,今回の研究で両手利きの生徒の一部がADHD症状を呈した理由が説明できる。
脳の違いの解明が必要
Rodriguez博士は今回の研究結果を受けて,「両手利きは興味深いテーマである。大部分の人はおもに片方の手を使うのに,なぜ一部の人は両手を使うことを好むのか不明である。今回の研究から,両手利きの小児の一部は右利きまたは左利きの小児と比べて学業に困難を感じやすいという興味深い結果が得られた。このような困難がなぜ生じるのかを理解するには,脳の違いを解明することが重要で,そのためにさらなる研究が必要である」と指摘。さらに,「両手利きは非常にまれな状態であるため,対象とすることができる両手利きの小児の数は比較的少ないが,今回の研究では統計学的にも臨床的にも有意な結果が得られた。しかし,この研究結果は,両手利きの小児が必ずしも学業の問題やADHDを呈することを示すものではない。確かに,両手利きの小児と青年では特定の問題を呈するリスクが高いことがわかった。しかし,われわれが追跡した両手利きの小児の多くは問題を全く示さなかったことを強調したい」と述べている。
今回の研究結果は,特定の問題が発生するリスクが特に高い小児を教師や医療専門家が見分けるために有用である。
今回の研究は,フィンランド・アカデミー(フィンランド・ヘルシンキ),Sigrid Juselius財団(同・クオピオ),チューレ研究所,オウル大学(同・オウル),米国立精神保健研究所(NIMH)から助成を受けた。
両手利きの小児は精神衛生上のリスク高い
[ 2010年3月11日号]
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