ライフスタイルがもたらすリスク低減効果
〔米オハイオ州コロンバス〕オハイオ州立大学総合がんセンター(コロンバス)アーサー・G・ジェームズがん病院とリチャード・J・ソロブ研究所ヒト遺伝子学部のJudith A. Westman教授と疫学者のAmy K. Ferketich准教授は,アーミッシュではがんの罹患率が低いとの研究結果をCancer Causes & Control(2010; 21: 69-75)に発表した。
全国平均より44%低い
今回,オハイオ州に住むアーミッシュ(近代文明を拒否して生活する新教徒)の集団を対象にがんの罹患率を調べる研究を開始した時点で,Westman教授らはがんの罹患率は一般集団よりも高いと予想していた。これは,宗教的な信条や伝統により一般社会との接触が限定されているアーミッシュ特有のライフスタイルと,比較的小集団内での近親婚により,がんに関連する遺伝子変異の発生率が高いと考えたためである。
しかし,今回の研究では全く逆の結果が得られ,アーミッシュの清廉厳格なライフスタイルが健康維持に貢献し,がんの罹患率の低減に寄与していることがわかった。
同教授らがアーミッシュを研究対象としたのは,生活環境が与える影響とがんの発症に寄与する遺伝子を調査するためだった。オハイオ州には世界で最も多くのアーミッシュが住んでおり,ホルムズ郡には約2万6,000人が居住している。彼らは皆,200年前にこの地に移り住んだ100人のアーミッシュの子孫である。
Ferketich准教授らは,横断的世帯調査の一部としてアーミッシュの92家族にインタビューし,少なくとも3世代前まで親族のがん家系図を作成した。祖父母へのインタビューでは,彼らの先祖や子孫の情報も得られた。
対象は同郡在住のアーミッシュの成人9,992人で,同准教授らは死亡証明書とオハイオ州がん罹患率監視システムに報告されたがん照合例の情報も収集した。研究期間中に191人が,がんを発症した。
同准教授は「アーミッシュは閉ざされた小集団であるため,92家族をインタビューするだけで同郡の人口の90%をカバーすることができた」と述べている。
アーミッシュの集団全体のがん罹患率は,オハイオ州の年齢調整がん罹患率と比べて40%低く,全国のがん罹患率と比べて44%低かった。アーミッシュの成人における喫煙に関連したがんの罹患率は,オハイオ州の成人に比べて63%低く,喫煙と関連性のないがんについては28%低かった。
同准教授は「アーミッシュの集団では多くの遺伝性疾患の罹患リスクが高かった。しかし,喫煙と飲酒が非常に少なく,性交渉の相手が限られているライフスタイルと,がん感受性を低くする遺伝子の影響で,多くのがんの発症を予防できているようだ」と述べている。
アーミッシュにおけるがんの罹患率を検討した試験はこれまでなく,1996~2003年に行われた今回の研究は初めての試みだった。アーミッシュの集団における24種類のがんの罹患率について調査した結果,子宮頸がん,喉頭がん,肺がん,口腔または咽頭がん,黒色腫,乳がん,前立腺がんの罹患率がオハイオ州よりも低く,統計学的に有意差が認められた。
たばこやアルコールの消費量が少ないことが寄与
オハイオ州のアーミッシュでがんの罹患率が低い理由は,たばこの消費量が少なく不特定多数との性交渉がないなどのライフスタイルにより,部分的に説明できる。アーミッシュのたばことアルコールの消費量は非常に少なく,彼らの多くは農業,建設業,工業などの肉体労働を中心とした仕事に従事している。
アーミッシュの多くは日光や紫外線に曝露される野外で働いて生活しているにもかかわらず,皮膚がんの罹患率が低い。この点についてWestman教授は「彼らは通常,作業をする際にはつばの広い帽子を被り,腕を守るために長袖の服を着ることが推奨されている。そのため,野外でもふだんからそのような服装をして体を覆っていることが影響しているのだろう」と述べている。
アーミッシュで低いがん罹患率
[ 2010年2月25日号]
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