〔ロンドン〕英国では院内感染リスクを防ぐため,花の持ち込みを禁止している病院もあるが,花はそれほど危険なものなのだろうか。インペリアルカレッジ(ロンドン)のGiskin Day,Naiome Carterの両氏は,病院内への花の持ち込みに関する文献を調査。また,王立ブロンプトン病院とチェルシー・ウエストミンスター病院(ともにロンドン)の患者や医療スタッフに花の持ち込みに関する聞き取り調査を行い,その結果をBMJ(2009; 339: b5257)に発表した。
花の管理は仕事量を増やす
英国の多くの病院では患者のベッドサイドに花を飾ることが禁止されているか,少なくとも奨励されていない。それは(1)花に含まれる水分に有害な細菌が存在しているのではないか(2)ベッドサイドに飾られている花が患者の酸素を奪うのではないか(3)また医療機器の周囲に花が飾られた場合に健康や安全にリスクをもたらすのではないか―などの懸念があるためである。この懸念は正当なものなのか,花を禁じることについて患者はどのように感じているのか。Day氏らは,これらの疑問点を解明するため文献を調べた。
1973年に行われたある研究で,花の水分には多数の細菌が含まれていることが明らかになった。その後の研究では,花の水分が院内感染の原因になったというエビデンスは得られなかったが,英国保健省から公式の発表がないまま,多くの英国の病院では病棟に花を飾ることが禁じられている。
1900年代後半,花は患者の酸素を奪うと広く信じられていたため,夜間には患者の枕元の花を移動させるのが一般的であった。しかし複数の研究で,花が病棟の空気組成に与える影響は無視できるほど小さいことが示されたため,このような習慣はなくなった。
同氏らによると最近,サウスエンド大学病院(サウスエンドオンシー)では,「高度医療機器の近くに花を置くと健康や安全にリスクをもたらす」という理由で花の持ち込みを全面禁止したが,ベッドサイドの花と飲食物が入った容器のリスクは同等という意見もあるという。
また,花の管理は仕事量を増加させるなどの理由で,大多数の看護師は花の持ち込みに賛成していないという報告もある。今回の医療スタッフの聞き取り調査でも,看護師は花の感染リスクよりも花の管理に伴う仕事量の増加などの実際的な影響を懸念していることが示された。
文化的に重要な行為
一方,花は男女問わず情緒反応,気分,社会的行動,記憶に直接的で長期に及ぶ有益な影響を与えるとの報告もある。ある研究では,植物や花が飾られている病室の患者では,飾られていない病室の患者よりも術後に要する鎮痛薬の量が有意に少なく,収縮期血圧と心拍数が低下しており,疼痛,不安,疲労感のスコアが低く,肯定的な感情が多いことが示されている。
Day氏は「かつて病院では花やハーブが治療薬として使用されており,少なくとも200年にわたり病院内を明るくする手段として用いられてきた。現在でも病院では花が重要な役割を果たしている。確かに花の手入れは手間がかかる。しかし,花を贈ったりもらったりすることは文化的に重要な行為だ」と指摘している。
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