〔米ニューヨーク州バッファロー〕ニューヨーク州立大学バッファロー校(UB)のJohn M. Violanti准教授らは,夜勤,超過勤務,睡眠不足が警察官のメタボリックシンドロームと関連するという結果をArchives of Environmental & Occupational Health(2009; 64: 194-201)に発表した。
臨床検査とアンケートで評価
今回の研究は,2003年に開始されたBuffalo Cardio-Metabolic Occupational Police Stress研究のデータに基づいている。
NCEP-ATP IIIにおいてメタボリックシンドロームは,腹部の肥満,トリグリセライド,HDLコレステロール(HDL-C),血圧,空腹時血糖値の5つの重要な臨床パラメータのうち3つに異常が見られることと定義されている。
ベースライン研究には,934人の警察官からランダムに選ばれた98人が組み入れられた。UB予防医学センターの臨床スタッフが,空腹時の採血,収縮期・拡張期血圧およびウエスト周囲径の測定を行った。被験者は,人口統計学的背景とライフスタイルに関するアンケートに答えた。
日々のシフト勤務や超過勤務に関するデータは,賃金支払帳から入手した。
CVDリスクに一般住民と逆の傾向
米国の一般住民データを収集した国民保健栄養調査(NHANES)によると,一般住民ではメタボリックシンドロームは21%を占めるとされているが,今回の夜勤警察官では30%であった。
夜勤警察官の平均年齢は36.5歳で,日勤警察官の平均年齢42.6歳と比べて若かったが,メタボリックシンドロームは30%を占め,30~39歳の一般住民の24%より高かった。
若年層の警察官でメタボリックシンドロームの有病率がわずかに高いことは,若年の警察官で心血管疾患(CVD)リスクが上昇することを示した警察官の死亡率に関するコホート研究の結果と一致する。一般住民ではCVDリスクは年齢とともに上昇するが,警察官ではこれとは逆の現象が起きていることがわかる。
その原因の1つとして,深夜勤務の警察官は日中に睡眠時間を確保することが難しいため寝不足になりがちであることが考えられる。睡眠不足は,炭水化物の代謝と内分泌機能に有害な影響を与えることがわかっており,このため代謝関連疾患が誘発される。
夜勤警察官がメタボリックシンドロームリスクに関連する複数の因子を持つ割合は,一般住民や日勤警察官と比べて高かった。
警察官以外でも研究が必要
ウエストが大きい人の割合は,一般住民の男性50%,女性30%に対し,警察官では55%であった。HDL-C値が低かった人の割合は,一般住民の男性38%,女性35%に対し,警察官では50%であった。
高血圧と糖尿病の指標である耐糖能異常がある割合は,夜勤警察官で高かった。また,深夜勤務で睡眠時間が6時間未満の警察官では,メタボリックシンドローム関連因子の平均保有率が日勤警察官より有意に高かった。
Violanti准教授は「今回の研究結果は,職業が心血管危険因子に与える影響についてのエビデンスを補強するものである。特に,当初の身体的・精神的健康状態が良好であることから選抜される第一応答者(現場に最初に駆けつける人)にとって,職業と疾患の関連に関する研究結果は重要であり,シフト勤務など具体的な就業形態との関連を模索することはさらに研究価値を高めることになる」と述べている。
同准教授は「今回の研究結果は,警察官の第一応答者だけに限らず,消防隊員,救急救命士,看護師,医師,航空管制官,軍人などの第一応答者の健康に関して研究するための布石となる。今後の研究によって,高リスクな職業におけるシフト勤務と心血管系の健康との関連性についてさらに理解が深まるだろう」と述べている。
今回の研究は,米国職業安全・保健研究所(NIOSH)の助成と,生物統計家の協力を得た。
警察官のメタボリックシンドローム/夜勤,超過勤務,睡眠不足が危険因子
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