〔独ミュンヘン〕マックス・プランク加齢生物学研究所(ケルン)のRichard C. Grandison博士らはミバエを用いた研究を行い,健康的な加齢にはカロリー制限ではなく,蛋白質を適切に組み合わせて摂取することが必要であるとNature(2009; 462: 1061-1064)に発表した。今回の研究は,健康的に年を取るための食事制限について,理解を深めるうえでヒントになるとしている。
メチオニンが鍵
ミバエやマウスの実験では食餌制限により寿命は延びるが,生殖能力が減少するという副作用もあることがわかっている。メスのミバエでは摂取カロリーが低下すると産卵の頻度が減少するが,生殖可能期間は延長する。このことは,必須栄養素は生殖ではなく,まず生存のために使われるという生物の進化的特徴を表している。
Grandison博士らは,メスのミバエの食餌を調節し,特定の栄養素やカロリー制限が健康増進につながるか否かを調べた。ビタミン,脂質,アミノ酸といった主要栄養素の量を変えた食餌(イースト,砂糖,水を含む)をミバエに与えたところ,生殖能力はアミノ酸の種類や量の組み合わせに影響されることがわかった。そのなかでも,必須アミノ酸のメチオニンが,生殖能力を抑制せずに寿命を延長するうえで非常に重要であることが示された。他の栄養素による影響は,ほとんどあるいは全く見られなかった。
同博士らは「アミノ酸のバランスを慎重に調節することで,ミバエの寿命と生殖能力を最大にすることができた。また,大幅な食事制限を行わなくても,生殖能力を維持したまま寿命を延ばせる可能性が初めて示された」と述べている。
食事制限が寿命に与える影響は,あらゆる生物で見られることから,進化を通して受け継がれてきたと考えられる。そのため,同博士らは,今回の機序も多くの生物で共通すると考えている。ヒトゲノムにはミバエの約4倍の遺伝子が存在するが,遺伝子レベルではヒトとミバエには多くの類似点があり,今回の実験結果はヒトでも意義を持つと考えられる。
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