〔シカゴ〕 ハウケランド大学病院(ノルウェー・ベルゲン)のMarta Ebbing博士らは,心疾患患者が葉酸とビタミンB12を用いた治療を受けた結果,がんや全死亡のリスクが上昇したとJAMA(2009; 302: 2119-2126)に発表した。今回の研究は,食品への葉酸強化が実施されていないノルウェーでの臨床試験のデータを検討したものである。
葉酸の安全性に疑問符
Ebbing博士らは「ほとんどの疫学研究において,葉酸摂取と結腸・直腸がんリスクとが逆相関することが示されているが,ほかのがんに関しては,そのような関係は存在しないか,あっても一貫性のないものである」と説明している。また,「これまでの研究から,葉酸の欠乏は発がんの初期段階を促進する可能性が示されている。一方,高用量摂取はがん細胞の増殖を促進することを示唆する証拠もある。1998年以降,米国など多くの国が先天異常の神経管欠損リスクを抑制するために,小麦粉や穀物製品への葉酸強化を義務化してきた。しかし最近になって,特にがんリスクの観点から,葉酸の安全性について懸念されるようになってきた」と述べている。
今回,虚血性心疾患患者を対象にホモシステイン低下療法の効果を検討した2件のランダム化プラセボ対照試験の結果を解析し,追跡調査を行ったところ,葉酸治療群では統計学的に有意ではないが,がん罹患率の上昇が認められた。これらの試験はノルウェーで実施されたもので,フォローアップ期間後に,葉酸治療とがん転帰および全死亡率とに関連性が認められるかどうかを検討した。同博士は「ノルウェーでは食品への葉酸強化が実施されていないため,両試験の参加者はこの種の研究に適した集団だった」と述べている。
葉酸治療群でがん罹患率が上昇
今回の2試験は,1998~2005年に虚血性心疾患患者6,837例にビタミンB類またはプラセボを投与し,2007年12月31日まで追跡調査したもの。これらの試験では,患者は(1)葉酸(0.8mg/日)+ビタミンB12(0.4mg/日)+ビタミンB6(40mg/日)の経口投与群(1,708例)(2)葉酸(0.8mg/日)+ビタミンB12(0.4 mg/日)群(1,703例)(3)ビタミンB6(40mg/日)単独投与群(1,705例)(4)プラセボ群(1,721例)―にランダムに割り付けられた。試験期間中,(1)群と(2)群では,(3)群と(4)群に比べ葉酸血清濃度の中央値が6倍超上昇した。
治療期間(中央値39か月)と試験後の観察期間(同38か月)の終了時点で,葉酸+ビタミンB12を投与されなかった(3)群と(4)群のうち288例(8.4%)が,がんの診断を受けていた。一方,(1)群と(2)群では341例(10.0%)ががんと診断されており,葉酸+ビタミンB12を投与された群のがんリスクが21%上昇していたことになる。
がんによる死亡は,葉酸+ビタミンB12投与を受けなかった群では合計100例(2.9%)だったのに対して,受けた群では136例(4.0%)で,がん死亡リスクは38%上昇した。全死亡率は,葉酸+ビタミンB12投与群の16.1%に対して,投与を受けなかった群では13.8%だった。
がん予防には長期研究が必要
Ebbing博士らは「このような結果をもたらしたのは,葉酸+ビタミンB12の投与群における肺がん罹患率の上昇によるところが大きい。ビタミンB6はどのような影響とも有意に関連しなかった」と説明。「今回の結果は他集団においても確認する必要があるが,栄養補助食品や葉酸強化食品からの大量な葉酸摂取に対する安全性のモニタリングが求められることを示している」と述べている。
ワシントン大学(ミズーリ州セントルイス)のBettina F. Drake博士らは,同誌の付随論評(2009; 302: 2152-2153)で「Ebbing博士らの報告は重要な短期的データであるが,この知見は葉酸強化が公衆衛生にもたらす潜在的な長期的利益を否定するものではない。予防介入には長期的評価が求められるが,利益が得られるまで数十年かかると考えられる」としている。
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記事タイトル[掲載号]
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