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スウェーデンで低炭水化物・高脂肪食がブームに/専門家の間で議論高まる
[ 2009年11月5日号]

〔ロンドン〕最近,スウェーデンでは低炭水化物・高脂肪(LCHF)ダイエットの人気が高まっているが,栄養学の専門家らの間では論争が続いている。これについて,オタゴ大学(ニュージーランド・ダニーデン)のJim Mann,Edwin R. Nyeの両博士がLancet(2009; 374: 767-769)で論評した。

糖尿病専門医が擁護

 近年,超低炭水化物AtkinsダイエットやLCHFダイエットが人気を集めている。これらのダイエットについての科学的な根拠はおもに「目立った悪影響もなく体重が減少する」という短期間の研究結果に基づいている。ほとんどの専門家はLCHFダイエットを指導することに反対しているため,同ダイエットは糖尿病患者の食事ガイドラインには組み込まれていない。しかし,スウェーデンでは最近,熱心な支持者がマスメディアの支持を受けて,国の政策にまで影響を及ぼしており,国の公衆衛生や個人の健康に悪影響を与える可能性が憂慮されるほどである。
 論争が始まったのは2007年で,2人の栄養士が保健福祉省の委員会(NBHW)に対して,プライマリケア医のAnnika Dahlqvist博士が糖尿病患者に推奨したLCHF食事アドバイスは,科学的根拠の面からも適切な診療行為とは認められないことを申し入れた。しかし,著名な糖尿病専門医であるChristian Berne博士が,LCHFダイエットでは長期にわたる研究が行われていなかったり,脂質測定が欠如しているといった患者モニタリングの不備などいくつかの問題点が存在するものの,若干の科学的根拠が認められると報告したため,Dahlqvist博士への疑いは否定され,NBHWもそれを認めた。その結果,NBHWが方針転換をしたとする記事が新聞で発表され,同博士も自身のダイエットは,糖尿病患者だけでなくすべての人々にとって健康と体重管理に適切であると述べるに至った。

熱狂的支持が専門家の意見を上回る

 その後,この一連の騒動にさらなる波紋を投げかける出来事が起こった。NBHWに所属する一部の専門家グループが,糖尿病患者のための栄養推奨に関するレポートを公表することになっていたが,新たに就任した委員長のもとで同委員会委員のBengt Vessby,Nils-Georg Aspの両氏が除名された。これは両氏がスウェーデン栄養財団を通じて食品業界とのつながりがあることが原因とされ,利害の対立につながると考えたからである。同財団は食品業界から資金提供を受ける一方で,専門家を通して同業界に独立したアドバイスを行っている。両氏は国際的にも著名であるため,2人の解任は同委員会の残りのメンバーや栄養学界の怒りを買うことになった。
 NBHWの専門家らが糖尿病患者のための栄養推奨に取り組む一方で, Mann博士らは「一時的なLCHFに対する熱狂的な支持とマスメディアの好意的な報道が,専門家の意見を凌駕したようだ」と述べている。また,同国最大の新聞であるAftonbladetは,LCHF食の効果について詳細に報じた。同博士らは「スウェーデン国立食糧管理局が,高脂肪食が健康に無害であることを示す論文はわずか8件にすぎず,むしろ有害であるとする論文が72件にものぼると発表したにもかかわらず,高脂肪ダイエットへの熱狂的な支持は続いている。このダイエットに関するDahlqvist博士の有名な著書は,同国ではノンフィクション部門の売り上げの第1位であった」と述べている。

エビデンスに基づくガイドラインが必要

 Mann博士らは,スウェーデン国民が今回の一連の騒動を単に専門家の意見が一致しなかった1例とみなすだけで,健康のために低脂肪食に変える機会として捉えないであろうと推測している。同国は,心臓のリハビリテーション術や予防心臓病学を開拓するのに貢献した国で,さらに小児肥満率の低下が見られる数少ない国の1つである。このような国で高脂肪食の議論が生じているとは皮肉だとしている。
 同博士らは「今回のケースには国際機関,専門家組織,政府・規制当局にとって役立つ教訓がいくつか含まれている。最も重要な教訓の1つはevidence-based medicine(EBM)と同様,栄養に関してもエビデンスに基づく指針として国際的に受け入れられる基準が必要ということだ」と結論している。

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