〔シカゴ〕ロンドン大学キングズカレッジ(ロンドン)のAndrea Danese博士らは,小児期に精神的または社会的に恵まれない境遇にあった小児は,情緒,免疫,代謝に異常が残る可能性があり,成人後に加齢性疾患を発症しやすいという研究結果をArchives of Pediatrics & Adolescent Medicine(2009; 163: 1135-1143)に発表した。
リスクが蓄積
高齢化の進展とともに心疾患,2型糖尿病,認知症など加齢に伴う疾患(加齢性疾患)を発症する人が増えている。そこで,これらの疾患を予防し,QOLを高める新しい方策が求められている。
Danese博士らによると,修正可能な危険因子(喫煙,運動不足,偏食など)に対する介入を,成人後から行っても加齢性疾患を予防するには限界があり,一定の効果しか認められない。さらに近年では,小児期にリスクにさらされると将来,加齢性疾患を発症しやすくなる病態生理学的変化が起こると考えられているという。
同博士らはDunedin Multidisciplinary Health and Development studyで,1972年4月~73年3月にニュージーランドのダニーデンに生まれた小児1,037例を長期間追跡調査した。
今回の研究では,最初の10年間,(1)社会経済的不利(2)虐待(3)社会的孤立―の3つの恵まれない境遇について対象の小児を評価し,32歳の時点で(1)うつ病(2)炎症レベルの上昇(血中炎症マーカーとしてC反応性蛋白を測定)(3)高血圧,コレステロール異常値,過体重など代謝性危険因子の集積(clustering)―など加齢性疾患の3つの危険因子の有無について検討した。
その結果,小児期に恵まれない境遇を経験した者は32歳時点でうつ病発症,炎症レベル上昇,代謝性危険因子の集積などのリスクが高かった。
同博士らの推定では,うつ病の31.6%,炎症レベル上昇の13%,代謝性危険因子集積の32.2%は小児期の恵まれない境遇に起因する可能性があるという。
また,同博士らによると,小児期の恵まれない境遇が加齢性疾患の発症リスクに与える影響は単に重複するのではなく,蓄積され,家族歴,出生時の低体重,小児期のBMI高値など発達上のあるいは併存する危険因子とは独立していたという。
同博士らは「加齢性疾患の発症につながる病態生理学的変化は,既に小児期に始まっていると長年言われてきた。そのため,小児には小児期から健全な精神的・社会的経験を促すことが,以後の加齢に伴う疾患の予防につながる。また,それは費用効果の高い方法でもある」と説明している。
成人後の加齢性疾患発症リスクを高める/小児期の恵まれない境遇
[ 2010年2月4日号]
記事タイトル[掲載号]
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